・街路に面するこれらの機能の異なる要素を、意匠的に統一して、多様な変化のなかに調和のとれた美しい町なみとなっている。代表的な民家に、杉山家や越井家などがある。杉山家は富田林寺内町の創設にかかわった旧家の1つで国の重要文化財に指定され市の監理のもと公開されている。寺内町の中心は、興正寺で鼓桜がこれにあたる。鼓桜や鐘桜は町の中央部の城之門筋の角地にあり、遠くからも良く目立ち、通りを行く人に適切な位置関係を与える。さらにこれらの発する鐘の音は、寺内町独特の地域の印象を形作る特長として住む人に心のよりどころとなり、まちのシンボルともなっている。
明治15年杉山家の長女として生まれた孝子は、女流詩人石上露子として活躍、「新誌社の5才女」と称され、悲恋の女心を唄った「小板坂」は代表作である。
”ゆきずりのわが小板坂 しらしらとひと枝のうばらいづこより流れかよりし。
君まつと踏みし夕に いひしらず汲みて匂ひき。 今はとても思い痛みて 君が名も夢も捨てむとなげきつつ夕わたればああうばら、あともとめず 小板坂ひとりゆらめく” ゆふちどり
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