まちなみ ―見えがくれの技法―
JR宮島口駅近くの桟橋から海上約10分で宮島桟橋に上陸する。海上にある朱色の大鳥居 ( 写真1 ) は対岸の桟橋からもよく見える。船が島に近づくにつれ,それはより鮮やかにはっきりと見えてくる。しかし島の桟橋に船が着くと鳥居は見えない。門前町を通り抜け石の大鳥居のところへ出ると,今度は海上の大鳥居が松の木の向こうに大きく目に入る。そして、参道は地形に沿って大きく曲がると今度は鳥居を背に歩く事となる。回廊は曲がり三たび鳥居が正面に姿を現わす。今度見る鳥居は対岸の中国山脈を背景に孤立した雄姿である。厳島神社はこの鳥居を中心に大きなスケールでの“見えがくれの技法”を用いて,感動や興奮・威厳を与えながら徐々に人びとを近づけている。鳥居のほかにも,丘の上の五重塔は主要な“見えがくれの要素”である。桟橋を降りて参道の正面に見た塔は,門前町を通る時には見えず出るころ再び姿を現わす ( 写真2 ) ( 写真3 ) 。回廊を渡って本殿の前にくると,朱の柱列を通して全く違った角度の五重塔を見上げるようになる。 |