ふうてんの寅さんシリーズ
   旅と女と寅次郎の舞台

舟大工が造った町 佐渡 宿根木
          交 通:直江津港よりジェットフォイル65分で小木港へ小木港より4、5km、
               所在地:新潟県佐渡市小木町宿根木

一人の旅する寅さんは、佐渡へ渡る。そこで一人の女性と知り合い、いっしょに旅をする。実はこの女性、演歌の大歌手・京はるみ(都はるみ)であった。失恋と過密スケジュールに耐えられず、公演の途中で失踪してきたのだった。寅さんは、京はるみであることにまったく気が付かない。 宿根木のおばあちゃん一人で切り盛りしている「田吾作」という民宿に、寅さんとはるみは泊まる。寅さんは自分が何者であるかしゃべるが、寅さんははるみの素性を聞こうとはしない。これが、寅さんのやさしさ。お酒を飲みながら二人で歌うのが、「矢切の渡し」寅さんは、はるみの歌のうまさに「銭がとれるよ」とほめる。

左の家は映画の中で寅さんと はるみの泊まった”民宿田吾作”

佐渡の歴史。古代から中世にかけて、わが国の主要な交通網は、中国、 朝鮮に近い日本海側にあった。その中でも陸奥や蝦夷と京都、大阪の中継港として佐渡島は重要な位置であった。江戸時代には、世界有数の金山として「相川」は栄え、また配流の地として、順徳上皇日蓮世阿弥などの文化人が少数のお供の者と共に流されて、生涯を過ごし公家文化を残した。
宿根木は佐渡島の南端、わずか1ヘクタール程の平地に発展した港町である。北面と東、西は海蝕崖に囲まれた波静かな遠浅の入江である。こに110棟の建造物がひしめく高密度のまちがある。全体は称光寺川に沿って少し南下がりで、北の奥に称光寺がありその寺の前と港の付近の南北2カ所に広場を有する。v前に海、三方が崖の地形は、城壁で囲まれ高密度で道が迷路のように突き当たり、狭い緊張の中から突然広場に出て開放感を味わえる。この集落全体の外部空間は、有機的に結合され、一体となった都市空間であって、建築と外部空間は「図」と「地」の関係にあって、どちらが「図」とも「地」とも言い難い魅力ある空間である。
このような外部空間を成立させているのは、集落の住居群である。個々の家々は、広場と路地、中庭を囲む形で建てられ混然一体となっている。それは微地形にわせ、建物を変形させ、高密度な敷地利用を図っている。この事が外部空間を魅力ある空間として造形している要因となっている。これを可能にしたのが、船大工である。宿根木は、北前船の船主のまちとして廻船業関連産業で繁栄した。船の外形は曲線である、厚い舟板を使って船内に大空間を造る技術を有している。道がカーブしている所では、家も曲面となっている。建築空間にも宿根木独自のスタイルがある。
代表的な民家は三室総二階の直列型配置で、一階は「にわ」に入り吹き抜けのある「おまえ」が中央にあり、奥に「なんど」のついた「ざしき」がある。「にわ」には「かまど」があり家事全般を行う所である。「おまえ」は家族団らんと接客をこなす場所であり、2階は中央に吹き抜けがあり、「おまえ」より階段で上り、吹き抜けを見下ろす「とおり2階」と称する吹き抜けの空中回廊より左右の部屋に入る、一方が「こ2階」で寝室となり、もう一方が「おお2階」で2階リビング又は客間となっている。壁面には、化粧柱、化粧貫があり階段、建具、収納壁共に全面漆塗り仕上げとなっている。天井は、下り天井で「格天井」でありここも漆塗り仕上げとなっている。外観では想像できない空間の豊かさ、質の高さを見ることができる。

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