宿泊体験の出来る
宿場町
太平宿
交 通 JR飯田駅より車で50分
所在地 長野県飯田市上郷町
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長野県南部の日本アルプス(木曽山脈)は、木曽駒ヶ岳(2842m)を主峰に高峻な山々が連なっている。山脈の北側は伊那谷で城下町飯田を中心に諏訪へと天竜川沿いに伊那盆地が伸びている。南側は、木曽谷が並行して走り木曽川沿いに中山道が走る。この険しい日本アルプスを超え伊那谷の飯田と木曽谷の中山道妻籠宿を結ぶ峠道の宿場として宝暦4年(1754)
大平宿
は開かれた。この道は脇道であり、細い山道である。(現在は県道飯田幸助線として車の通行は可能)飯田、妻籠間は、山越えではあるが急げば一日で越えられる。
この為、峠附近にある大平宿は、宿泊目的でなく、旅人の休憩や待避のための茶屋宿であった。
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明治、大正の最盛期は、国鉄中央線の開通でアルプス南側の物資が峠越えで陸送された。しかし、飯田線の開通で使命を終え、ついに、昭和45年27戸の民家全世帯、集団移住を行った。現在は無人の宿場町であるが、集落の歴史的価値に注目して、ボランテイアの人々の手で保存管理され、一般の人々に体験宿泊場として開放されている、民宿のように管理者はいないので、利用者自らがせせらぎで水を汲み、自分で薪をつくり自炊生活をして生活の原体験を味わうという企画である。テレビは受信できず、水道もないが現代の生活では失われた大切な何かが発見できる事であろう。毎年年間2千人位の利用者があるそうだ。
大平宿の民家は清流の流れる街道に沿って散在し、周囲の大自然と調和している。建物は平屋であるが二階建てに見えるセガイ(出桁造)を街道面に備え、石置屋根と共に素朴な宿場らしいたたずまいである。一番大きい紙屋という屋号の家は、天保8年の建築で広間だけで15坪、前土間も奥行き二間あり、大黒柱と広間上部の井桁組は圧巻である。その他、屋号大蔵屋等、間取りはほぼ共通で前土間型で、通りに面して土間があり、通りに対しても家の内部に対しても広く開放されている。
床上部分が土間に接するところに一畳大ほどのユルリが切ってある。この地方では、イロリをユルリと発音する。旅人は上がり框に腰をかけて一服し、ユルリにあたってお茶を飲む。ユルリという言葉が情景を思い浮かばせるような良い言葉に思える。この無人の宿場町が、いつまでも存在し続けることを願わずにはいられない。
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